語り部:淘翁

ホッホッホ。淘翁じゃ。あれじゃ、よく絶世の美人のことを「傾城(けいせい)の美女」とかいうじゃろ。城が傾いてしまうほどの美人ということじゃが、その日本語の元ネタとなっておる詩を紹介したい。李延年の『北方に佳人あり』じゃ。これは李延年の妹について書いた詩でな。うむ、そうじゃ李延年は自分の妹の美しさについて歌ったシスコン・・・という見方もできるじゃろうが、実際は皇帝(武帝)に対し妹を夫人として推薦する意味合いもあった。「私の妹はこんなに美人ですよ、夫人にしてはいかがでしょうか?」といった感じじゃ。結果、この詩を聞いた武帝は実際に李延年の妹を夫人としておる。実際に李夫人は美貌の持ち主だったようじゃの。

北方有佳人
běi fāng yǒu jiā rén

北方有佳人,絕世而獨立。
běi fāng yǒu jiā rén , jué shì ér dú lì 。
一顧傾人城,再顧傾人國。
yī gù qīng rén chéng , zài gù qīng rén guó 。
寧不知傾城與傾國?
níng bù zhī qīng chéng yǔ qīng guó ?
佳人難再得!
jiā rén nán zài dé !

【書き下し文】
北方に佳人あり
絶世にして独立す
一顧すれば人の城傾き
再顧すれば人の国傾く
いづくんぞ 傾城と傾國とを知らざらんや
佳人は再び得難し

【現代語訳】
北に美しい人がいた この世でただ一人の稀有な人
ひとたび眼差しを向ければ彼女の住む城がつぶれ
ふたたび眼差しを向ければ彼女の住む国が滅ぶ
城がつぶれ国が滅ぶのを分かってはいても
このような美人を再び手に入れるのは難しい

ホッホッホ。美人の例えにはいろいろあるが、スケールの大きさで言ったらこの「傾城」「傾国」が圧倒的じゃな。