語り部:陶翁

ホッホッホ、桃の節句が近くなってきたのう。スーパーなどに行くと桃花が売られておるわい。わしは桃の実も桃花も大好きないわゆる桃マニア。部屋には桃花を飾り、毎日のように桃を食っておる。と、それはさておき、中国では古来から桃花は詩の題材として扱われてきた。以前に3000年前の古代人の意識にアクセス!『詩経』の「桃夭」を読むという記事を書いておるので興味のある方は読んでみるといいじゃろう。今日紹介するのは吴融の七言絶句、『桃花』じゃ。桃花の詩は数多くあるが、この詩が圧倒的にきらびやかじゃ。字面も視覚的に美しいが、これも漢詩の重要な鑑賞ポイントじゃよ。それと、この吴融の『桃花』はほとんど日本では紹介されておらん。このページを偶然目にしておる方は希少価値の高いものを見ておる。すなわちラッキーじゃ。

<原文>

桃花 táo huā

滿樹和嬌爛漫紅 mǎn shù hé jiāo làn màn hóng
萬枝丹彩灼春融 wàn zhī dān cǎi zhuó chūn róng
何當結作千年實 hé dāng jié zuò qiān nián shí
將示人間造化工 jiāng shì rén jiān zào huà gōng

<書き下し文>

桃花

満樹は和して嬌たり爛漫(らんまん)の紅
万枝丹彩(たんさい)灼(しゃく)たりて春に融す
何(いつ)か當(まさ)に結び作るや千年実
将に示す 人間の造化工を

<解説>
書き下し文で意味はだいたいわかるじゃろうかの。起句、承句では陶酔しそうな程豪華な表現で桃の木の鮮やかに咲き乱れる様を描写し、転句では桃の実に焦点をスライドさせておる。結句の「人間の造化工」じゃが、この「人間」はわしらの日常で使用する「人間」とは違う。これは世界、つまり自然を意味しておるのじゃ。作者は結句において自然の幸、自然の作り出した神秘に対して驚嘆しているというわけじゃな。