宋詞は唐詩と並んで中国文学の最高峰であるが、日本ではほとんど知られていない。そこで、宋詞について知っていただくべく、当サイトでは既に蘇軾辛棄疾の詞を紹介してきた。さて、この他にもこの宋詞を語るに当たって是非とも紹介したい人物がいる。李清照という女流詞人だ。李清照は中国では非常に人気があり、中国文学史上最高の女流詩人という評価もある程である。今回はその李清照の「減字木蘭花(げんじもくらんか)」を紹介する。この詞は新婚生活の一場面を生き生きと美しく描写したものだが、まるで勝気で天真爛漫な中国の女性が目の前に現れてくるようである(もしかして今も昔もこの気質は変わっていないのだろうか?)。

【原文】

「減字木蘭花」
賣花担上,買得一枝春欲放。
涙染軽匀,猶帯彤霞曉露痕。
怕郎猜道,奴面不如花面好。
雲鬢斜簪,徒要教郎比並看。

【現代語訳】

花売りから買った 今にも開きそうな苞の梅。 
涙の光る少女のように軽やかで美しいその花は紅い朝霞を浴びてきらきらと輝いている。
もしかしたら夫は私の貌よりも花の貌の方が美しいって言うかもしれない。
その花を髪に斜めに挿してかんざしにしてみた。
意地でも夫に花と私とどちらが美しいか比べてもらわなくちゃ。

【書き下し文】

「減字木蘭花(げんじもくらんか)」
売花の担上より買い得たり 放たんと欲す一枝の春。
涙に染まり軽やかに匀(ととの)いて 猶ほ帯びる彤(あか)き霞 暁露の痕。
怕(おそ)る 郎(おとこ)の猜(うたが)い道はく 奴(やつがれ)の面 花面の好きに如かずと。
雲鬢(うんびん)に斜に簪(さ)したり 徒(いたずら)に要(もと)め 郎をして並べ比べて看せしむ。

【単語解説】

減字木蘭花:詞牌の名。詞牌は今で言う曲名のようなもの。それに合わせて詞をつくる。ほとんどの場合、詞の内容と詞牌の名は関係ない。
一枝春欲放:今にも咲きそうな梅の花を巧みに表現している。
奴:女性が自分をへりくだって言う言葉。
雲鬢:女性の豊かで美しい髪。
簪:ここでは動詞。挿してかんざしにするという意味。名詞の場合はかんざしそのものを意味する。

【簡体字/ピンイン】

减字木兰花
卖花担上,买得一枝春欲放。
泪染轻匀,犹带彤霞晓露痕。
怕郎猜道,奴面不如花面好。
云鬓斜簪,徒要教郎比并看。

jiǎn zì mù lán huā
mài huā dān shàng , mǎi dé yī zhī chūn yù fàng 。
lèi rǎn qīng yún , yóu dài tóng xiá xiǎo lù hén 。
pà láng cāi dào , nú miàn bù rú huā miàn hǎo 。
yún bìn xié zān , tú yào jiào láng bǐ bìng kàn 。

中国文学史上最高の女流詩人 李清照の「武陵春・春晚」を読む!