語り部:陶翁

ホッホッホ。陶翁じゃ。しばらくじゃの。以前に弘法大師空海の七言絶句を紹介したところ、ツイッター上で多少の反響をいただいた。今回も同様に空海の七言絶句を紹介してみようかと思っておる。この七絶は淳和天皇の命により編纂された勅撰漢詩集である「経国集」に収録されておるものじゃ。中国から日本に帰国する際に同門の僧に贈ったものとされておる。わしはこの七絶を中国のネット上見かけたことがあるが、「すばらしい」「感動的だ」と評されておった。わしも同感じゃ。ま、まずは読んでみようかの。下の動画は英華宝で作成したものじゃ。

【原文(簡体字)/ピンイン】
留别青龙寺义操阿阇梨」 liú bié qīng lóng sì yì cāo ā shé lí
同法同门喜遇深 tóng fǎ tóng mén xǐ yù shēn
随空白雾忽归岑 suí kōng bái wù hū guī cén
一生一别难再见 yī shēng yī bié nán zài jiàn
非梦思中数数寻 fēi mèng sī zhōng shù shù xún

【書き下し文】
「青龍寺にて義操阿闍梨に留別す」
同法同門に遇へたる喜びは深けれど
空に随いて白霧も忽ち峰(みね)に帰す
一生一别再び見(まみ)え難し
夢に非ず 思中に数数(しばしば)尋ねん

【現代語訳】
同じ仏門の友としてあなたに出会えたことに私は深い喜びを感じています。しかし、空を漂って流れる白霧がたちまち峰に帰るように、私も故郷に帰る時が来てしまいました。今生、ひとたびお別れしてしまえば次にお会いする事は難しいでしょう。ですが、夢の世界の中ではなく、この現実世界においていつも胸の中であなたを思う事にいたしましょう。

【解説】
青龍寺 空海が修行し密教の奥義を授かった寺じゃ。
義操 不詳だが、詩の内容から空海の同門の僧じゃろう。
阿闍梨 ここでは密教僧への敬称。
「一生一别再び見(まみ)え難し」「夢に非ず 思中に数数(しばしば)尋ねん」については、あえてに宗教的な解釈はしておらん。友人であった僧に対する空海の誠実な心がこちらにも伝わってくる感じがして、なんとも言えぬ感動を覚えるのはわしだけではあるまい。