君子居其室,出其言善,则千里之外应之,况其迩者乎。
jūn zǐ jū qí shì, chū qí yán shàn, zé qiān lǐ zhī wài, kuàng qí ĕr zhĕ hū。
君子その室に居りてその言を出だす。善ければ則ち千里の外もこれに応ず。況やその近き者をや。

居其室,出其言不善,则千里之外违之,况其迩者乎。
jū qí shì, chū qí yán bù shàn, zé qiān lǐ zhī wài wéi zhī, kuàng qí ĕr zhĕ hū。
室に居りてその言を出だす。善ろしからざれば則ち千里の外もこれに違う。況やその近き者をや。

 

【現代語訳】
君子が自分の部屋で言葉を発したとする。その言葉が善ければ千里離れている人ですらこれに感応する。ましてや近くにいる者ならばなおさらである。同様に、その言葉が悪いものであれば、千里離れている人ですらこれに反発する。ましてや近くにいる者ならばなおさらである。

【解説】
この句は『易経』繋辞伝の中で、孔子が「中孚」の卦に出てくる「鹤鸣在阴,其子和之(鶴陰にありて鳴く、その子これに和す)」という文言を解説した部分です。「鹤」は「君子」を、「鸣」は「言葉を発する」ことを、「在阴」は「心の奥、無意識下」を、「和之」は「应之」を指すと考えられます。

この句において場面が君子の「室」=「自分の部屋」に限定されているのはなぜか?と疑問に思われた方もいると思います。表の広間である「堂」に対し、「室」は奥まった部屋、すなわちプライベートな空間を示します。このプライベートな空間においては君子は独りであり自然な状態へと戻ります。その状態においては「無意識下の言葉」が表出しますが、それは普段の日常的な立ち居振る舞いや行動と不可分の関係にあります。従って句中の「言」は「君子の普段からの人間性」を同時に表わしているというわけです。

この句には「君子」という主語がついていますが、「君子」は理想の人格者を指しますので、より一般的な主語を置いて読み替えることも可能です。むしろその方が普遍的な道理を抽出し、より高い臨場感を得られる場合があります。試しに「君子」をより一般的である「あなた」に置き換えてみましょう。

あなたが自分の部屋で言葉を発したとする。その言葉が善ければ千里離れている人ですらこれに感応する。ましてや近くにいる者ならばなおさらである。同様に、あなたの言葉が悪いものであれば、千里離れている人ですらこれに反発する。ましてや近くにいる者ならばなおさらである。

より分かりやすく、リアリティを伴った訳になったたと思いますがいかがでしょうか。

『易経』にはこの他にも言葉に対する深い考察を凝縮した名句名言が多くあり、私たちはそこから様々な啓示を受けることができます。本サイトではピンイン付で紹介し、皆さんにシェアしていきたいと考えています。

 Written by 岡安草莱